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【敷金の返還義務 相続人が負うの?】納税通信3748号 vol.3

November 22, 2022

相続税

Q3 敷金の返還義務 相続人が負うの?

 

 先日亡くなった父の財産のうち、賃貸不動産として所有していたマンションを相続することになりました。入居者から預かっている敷金の返還義務は私が負うことになりますか。また、相続税の計算で債務控除の対象となりますか。

 

A3 賃貸人の地位を引き継ぐ者が義務を負います。なお、相続税で敷金は債務控除の対象です。

 

 入居者から預かっている敷金の返還義務については、原則として賃貸物件の契約に付随して賃貸人としての被相続人の地位を承継する者が、賃貸物件と合わせて敷金返還義務も負担承継します。したがって、ご質問のケースでも、特段の事情がない限りご質問者が債務を負担することになります。

 また、入居者から預かっている敷金は、将来、賃貸借契約が終了した時に賃借人に返さないといけない債務ですから、相続財産からマイナスできる債務控除の対象です。

 

 ビルやアパートなど収益用の賃貸不動産を保有している場合、遺産分割の際に、しっかりと話し合って全員で合意をした割合で分けることが必要となります。法定相続分通りに、財産を均等に分割すると当然、土地・建物を共有することになりますので、その後の売買や建て替えなどの法律上の判断や管理、不動産を担保にお金を借りている場合、借金の返済も共同で行うこととなります。

 

 価値の大きな不動産があることで、相続人同士でトラブルが生じ、解決のために法律事務所の弁護士を交えて話し合いや調停で決める必要性が生じる事例も多くあります。できれば生前に遺言書を作成しておき誰が不動産を取得するか明確にしておくなど、合意がとりやすいように何らかの対応を行っておくようにしましょう。また、アクセスがよく不動産の価値が高い場合は不動産を特定の一人に相続させると他の家族の遺留分を侵害するケースもあります。子どもが複数いる場合で単独で不動産を相続すると、場合によっては税金も考慮すると相続放棄をしてもらわざるを得ないケースもあります。相続が発生する前に預貯金や株式、不動産、生命保険など財産の一覧を作成し、税金などの制度を理解したうえで共有するか、売却するかなど事前によく内容を協議した上で結論をだしたほうがよいでしょう。

 

 なお、遺産の相続税評価を行う際、預かり敷金については、返還するまでの期間に応じた複利原価率で、評価(割引計算)する必要があります。

 

 相続税の計算は複雑で、被相続人の死亡の翌日から10ヶ月以内と短い期間で申告する必要があります。申告に問題があった場合、税務調査で指摘され、加算税を請求される可能性があります。流れや方法がわからず自分で申告をすることに不安がある人は費用はかかりますが税理士に依頼するようにしましょう。相続人や関係者から紹介してもらうことが難しい場合はホームページなどで相続税の申告の実績が豊富な税理士を探すことをおすすめします。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、気軽に連絡してみるとよいでしょう。

 

 

 賃貸不動産を相続する際は、将来返還しなければならない預かり敷金に相当する金銭について、相続後の賃料収入でまかなえるか、もともとの自身の財産で補てんができないような場合には、不動産を相続すると同時に、預かり敷金に相当する金銭についても相続するなど、対策をしておきましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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