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【父の死去で母が相続 将来的な二次相続の留意点は?】納税通信3752号 vol.1 

December 14, 2022

相続税

Q1 父の死去で母が相続 将来的な留意点は?

 

 先日父が亡くなりました。相続財産は、配偶者の税額軽減の制度が適用できる範囲内に収まっていそうなため、相続税がかからない母に全財産を相続してもらおうと思っていますが、なにか留意する点があれば教えてください。

 

A1 二次相続での税額が大きくなってしまうことには注意が必要です。

 

二次相続とは

 

「一次相続」とは、両親のどちらかが死亡した相続で、「二次相続」とは、残された配偶者が死亡した相続を指します。配偶者の税額軽減は相続税の軽減効果が大きいため、要件を満たす場合は、この特例を最大限活用できるように遺産分割すれば、「一次相続」の相続税で負担が少なくなります。

 

 しかし、一次相続で配偶者控除を最大限に使うと、1億6千万円または法定相続割合まで、非課税で相続することができますが、二次相続で多額の相続税がかかってしまい、トータルではかえって損をする例もあります。二次相続の相続税が多額となる理由としては、被相続人の配偶者がおらず「配偶者の税額軽減の特例が使えない」ことに加え、「相続人が1人減る」ことで基礎控除に加算できる数が1人分(600万円)減ることにありますので、一次相続の時点で相続人が多いうちに、預貯金や値上がりが期待できる資産、賃貸住宅など継続的に収入を生む資産を次の世代に特定の財産を残すこともポイントとなります。また、残された配偶者にも親から遺産相続した財産など固有の財産があれば、一次相続で相続した財産が加わることで課税対象となる相続財産が一次相続時以上に多額となり、高い税率の税負担がかかることもあります。相続税の節税対策は二次相続まで含めて考えることが大切です。

 

二次相続で考慮すべきこと

 

 当記事のように、配偶者が全額相続するケースは多いと思いますが、相続税は一次相続と二次相続のそれぞれの金額の合計の額で考える必要があります。一次相続で配偶者にすべて相続させると、いずれ起きる二次相続のタイミングで税金が高くなるというデメリットがあります。二次相続もふまえて具体的に考慮すべきことや注意点について、以下に解説します。

 

 まず、把握しておきたいのが、相続する者によって利用可否が異なる特例や税額控除です。例えば、一次相続で被相続人が亡くなる直前まで住んでいた居住用の自宅を相続する場合に利用できる小規模宅地の特例は自宅の土地の評価を最大330㎡まで80%も評価額を減額できる、効果の大きい制度です。

 

 メリットの大きい小規模宅地の特例などの控除を使えるうちに、預金や株式などの金融資産を多く子どもに遺す方法も有効です。所有する財産の内容や資金によっては法定相続分を超える金額を子が相続しても良いでしょう。他にも夫婦間で財産がどちらかに偏っている場合は、年間110万円まで非課税となる暦年贈与や配偶者間の贈与税の特例を利用し、非課税枠の範囲で現金で生前贈与を行って、できるだけ夫婦で財産を均等にしておくことも有効な手段の一つです。贈与を毎年続けることで、大きな資産を移転することができるため、課税対象の財産を簡単に抑えることが可能ですので、将来を見据え少しずつ夫や妻に贈与しておくとよいでしょう。

総額が同じ遺産でも分け方や取得する人によって、課税される金額が大きく異なる可能性がありますので、さまざまな配分方法で計算をしてみて、シミュレーションをしてみるとよいでしょう。亡くなってからよりも生前に、さらには、なるべく長い期間をかけて行う方がさまざまな対策を行うことができますので、できるだけ早く検討するようにしましょう。

 

 他にも、生命保険に加入し非課税枠を利用することも有効な手段です。死亡時に受け取る保険金は、法定相続人×500万円まで非課税で財産を受け取る(遺す)ことができますので、保険金の受取人を配偶者だけでなく、子供にしておくのも有効な手段となり得ます。相続税対策は数多くあります。そのため、自分に合った方法を選ぶことで一定の相続税を減らすことが可能です。どのような対応を行うか、家族とも相談をし、相続人同士でのトラブルを防ぐために、考慮して事前に話し合いを行っておくとよいでしょう。

 

困った場合は専門家に相談を

 

 本やホームページなどを参考に税金の申告をすることは可能です。しかし、経験のない人が相続税の計算や書類を作成することは簡単ではありません。費用はかかりますが、財産の種類が多く、配分が複雑になる事例や課税対象となる土地・建物の評価が難しい場合はプロに任せることも選択肢の一つです。

 

 納税額を抑えるためにも税理士または税理士法人など専門家のサポートを受けることをおすすめします。できれば、相続発生後に分割の協議で問題が起こらないように遺言書を作成し、遺言書通りに預貯金の名義変更や不動産の登記などをスムーズに行い、財産を承継できるように手続きも依頼しておくと安心です。遺言書は作成後に内容を変更することも可能です。知人から税理士の紹介を受けることが難しい場合は相続に関連する業務を主に行っている、実績の豊富な弁護士や司法書士、税理士をサイトなどで探すようにしましょう。

 

 相続税の期限は10ヶ月と期間が短いうえに相続が開始した後では、出来ない対策もありますので、相続発生前に対策を打つことが重要です。初回の相談は無料で応じてくれるケースもありますので、気軽に電話やメールなどで相談してみましょう。

 

 税理士に相談する際は、まずは財産を調査し、一覧にして、特例を相続税の概算や利用できる条件を確認しておくとよいでしょう。今後税制改正などで、実際に納める税金が大幅に増える可能性がありますが、現時点での税額を確認しておくことは重要です。その後、適宜見直しを行い、自分に最適な方法を選択するようにしましょう。誤った申告をすると、加算税を請求されるなど、通常の相続税よりも高くなる可能性がありますし、十分に事前の準備をすることで、税務署による税務調査が入っても落ち着いて対応することもできます。

 

 一次相続の際、収益不動産は配偶者以外が相続し、同居している子どもがいれば、子どもが自宅を相続するなど、誰がどの資産を相続するのかも、二次相続対策を考える上では重要です。

 


納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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