Blog
相続お役立ち情報
【疎遠な姉弟がいるが・・・ 妻に全財産を遺したい】納税通信3729号 vol.3July 07, 2022 |
相続税 |
---|
Q3 疎遠な姉弟がいるが・・・ 妻に全財産を遺したい
私たち夫婦には子どもがおらず、私の両親も既に他界しているため、私の法定相続人は妻のほかは姉と弟です。ただ、姉弟とは疎遠になっており、私が亡くなった際は妻の生活のために自宅の不動産や預貯金など全財産を妻に残したいと思っていますが可能でしょうか?
A3 兄弟姉妹には遺留分の請求権がないため、遺言によって妻に全財産を相続させることができます。
遺言書の内容にかかわらず、配偶者、子供、親などの直系尊属が最低限の相続財産を保障される権利を遺留分といいます。遺留分を請求する権利がある人は民法で定められ、兄弟姉妹(代襲相続が発生している場合は甥・姪)には遺留分の請求権はありません。遺留分割合は、相続人が直系尊属のみなら財産の3分の1、配偶者と子なら2分の1です。
今回のケースでは兄弟姉妹の遺留分はありませんが、夫や妻、子などの遺留分を侵害してしまうと、遺言者が亡くなった後に遺言書通りに配分できない可能性があります。そのため、遺言書を作成する時に土地の評価などを確認し、遺留分を計算して遺留分に相当する額を資金で確保するなど方法を考えたうえで作成する必要があります。
遺言書は、自身の最後の想いを残された相続人に伝える書面です。遺言書を残しておくことで、相続人同士が遺産相続をめぐりトラブルにならず、円満に承継の手続きを進めることができます。遺言書には付言事項といわれるメッセージを記載することもできます。遺贈にあたって考え方や配分を検討するうえでポイントを書いておくことで、考えを伝えることができます。そのため、家族も死後に遺言者の考えを理解して相続手続きに入ることができるので財産を分ける際に相続人間関係の悪化を防ぐことができるというメリットがあります。一度相続で問題が発生し、それぞれの考えをぶつけあって争いに発展しまうような状況になると解決することは非常に難しくなります。遺言を用意する際に配分でもめないように配慮して作成する必要があります。
相続発生前に遺言書を作成するなどの対応をしておくことで、遺産分割の協議をする必要がなくなるため、相続で財産を取得する者の負担を大きく減らすことができるでしょう。当記事で解説した事例のように明確に法定相続分とは異なる遺産の分割の希望がある方の対策としては生前の遺言作成がもっと有効な手段ですので、遺言の検討をすることをおすすめします。
知識がなく書き方がわからず、自分で法律上有効な遺言書作榮を行うことが難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するか、市区町村役場が開催している無料のセミナーなどに気軽に参加してみても良いでしょう。また、遺言書には被相続人名義の預貯金の名義変更や不動産があった場合は登記など関連する手続きをする執行者を指定することが可能です。
執行者には法定相続人以外を指定することもできますので、司法書士などにサポートを依頼することも可能です。預貯金や不動産など財産の一覧などの資料をつけておくことで、財産を調査し特定する手間も省けますので、忙しい中でもスムーズに遺言に指定されている配分を実現することができるでしょう。高齢になると認知症などの健康上の理由で遺言を書くことが難しくなる可能性もありますので、心配な方は早めに書いておくことをおすすめします。
遺言書は全て自筆が原則でしたが、最近は財産目録などをパソコンで作成することも可能です。少ない費用で法務局で遺言の形式のチェックや保管をしてくれる制度も始まっています。家に保管しておくと紛失のリスクもありますが、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用することで死亡するまで安心して保管してもらうことができます。これを機会にこのような制度を活用して遺言書を作成することも検討してみましょう。
『納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。
相続税のご相談は増田浩美税理士事務所 まで