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【長男の嫁に財産分与 遺言がなくても可能?】納税通信3722号 vol.3

May 18, 2022

相続税

Q3 長男の嫁に財産分与 遺言がなくても可能?

 

 先日、父が亡くなりました。兄弟からは、亡くなった父の面倒を最後まで見てくれた私の妻にも遺産の一部をあげたいという話が出ています。遺言書はないのですが、相続人ではない妻にも相続させる方法はありますか?

 

A3 相続人以外は遺言がなければ相続できないため、相続人から贈与して、相続税よりも負担の大きい贈与税の納税義務が生じます。

 

 相続が開始した際には、親の財産を誰がどのような割合で遺産を引き継ぐのか、遺産の分け方について、相続人全員で協議(遺産分割協議)します。遺言による指定があっても、相続人全員で合意すれば、遺言の内容や法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることができます。

 ただし、相続人には順位があり、相続する者の範囲が決められています。そのため、遺言に、相続人以外の第三者に財産を遺す(遺贈する)旨の記述がない限り、相続人が相続放棄をしたとしても、相続人以外が被相続人から直接、財産を受けとることはできません。そのため相続権がない、法定相続人以外に相続財産を振り込むなどの手続きを行い、実際に資金を手にしてしまうと、それは相続ではなく、相続人から財産を贈与された扱いになり、相続税よりも税負担が重い贈与税が発生してしまうため注意が必要です。子供が存命の状態で子供を飛ばして孫に相続させた時も同じ理由で生前贈与となり、贈与税の対象となってしまいます。

 

 当記事の事例のように、子供の配偶者が、生前に実際の両親のように介護を行ってくれて、その分家族として財産を遺したいと考えるケースは多いでしょう。しかし、遺言を書いておかないと、相続が発生した後では相続人全員が納得したとしても、財産を遺すことはできないのです。遺言は亡くなる直前に書くことは難しいため、早めに作成しておくことが重要です。遺言の書き方が分からない場合は司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。また、遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言があります。自筆証書遺言の方が自宅で簡単に作成することができますが、相続人が遺言の存在を知っておく必要がありますし、どこに遺言があるか調査する必要があるケースもあります。また、家庭裁判所で検認を受ける必要があり、手間がかかります。そのため、作成時に法的な効力が確定し、偽造や変造の恐れがない公正証書遺言をおすすめします。

 

 次に子供の配偶者に遺すために遺言を残す場合の注意点についても解説しておきます。子の配偶者に財産を遺す場合、他の子供の配分が少なくなるということになりますので、配分で揉めないように配慮が必要です。孫がいない場合は、子供の配偶者の遺すことで、子供の配偶者が亡くなった場合に配偶者の兄弟姉妹に財産が流れてしまう可能性もあります。

 また、不動産など額の大きい財産を子どもの配偶者の遺した場合、遺留分を侵害する可能性もあります。遺留分は民法で定められた最低限の財産を承継することができる法的な権利ですので、遺留分を請求されると遺言通りに財産を取得することができません。遺言を作成する際は、預貯金、不動産、生命保険など資産の一覧をまとめ、遺産相続によって兄弟姉妹の関係が悪化し、トラブルとならないか可能性を検討してから配分を決めるようにしましょう。もし、トラブルとなってしまい、当事者同士で円満に解決できない場合は、弁護士を交えての争いとなる可能性もあり、かなり時間がかかってしまいます。

 

 もう一つのポイントは相続税の2割加算の対象となる点です。相続税の2割加算とは被相続人の配偶者、父母、子以外の人が財産を相続した場合、相続税の計算後、2割相当額が加算される制度です。子の配偶者や甥や姪は2割加算の対象となり、通常よりも税金が高くなります。税務的な面でも問題が生じる可能性がありますので、税理士を知り合いに紹介してもらうなどして、相談しておいた方がよいでしょう。相続税の計算は特例や各種控除等の制度の活用可否の判断や、土地の評価なども重要となってきます。知り合いや紹介してもらう税理士がいない場合は税理士のサイトなどで相続税の申告実績が豊富な税理士に依頼するようにしましょう。

 相続税は原則、被相続人の死亡の翌日から10ヶ月以内と期限も短いです。相続発生後は相続税の申告だけでなく、不動産の登記や記入機関の名義変更も短い間に行う必要があります。自分や財産を受け取る他の親族に知識がなく、申告手続をすることが難しい場合は税理士に依頼するとよいでしょう。

税理士に申告を依頼すると費用はかかりますが、税務調査などの対応もサポートしてくますので、安心して任せることができるというメリットがあります。初回の相談はサービスで無料で応じてくれる税理士も多いのでまずは電話やメールなどで気軽に相談してみましょう。生前に依頼することで、節税対策についても相談することが可能です。

 

 

 

 法定相続人以外の人に財産を遺してあげたいというときには、遺言にその意思を明記しておく必要があります。万が一の事態が起きる前に、事前に対策するようにしましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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