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【老人ホームにいた母の死 空き家特例は適用可能?】納税通信3716号 vol.3

April 08, 2022

相続税

Q3 老人ホームにいた母の死 空き家特例は適用可能?

 

 昨年母が亡くなり、母が住んでいた自宅を承継しました。私はすでにマイホームがあるため売却を検討しています。母は父が亡くなってから一人暮らしでしたが、亡くなる前2年ほどは老人ホームにいました。「空き家特例」は適用できますか?

 

A3 亡くなった方が要介護認定を受け、かつ相続直前まで老人ホームに入所など一定の要件を満たせば認められます。

 

 亡くなった人の自宅を相続で取得して売却して得た金額は、一定の要件に該当することで所得から最大3000万円まで控除することができます。これを、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(空き家特例)といいます。

 特例の対象となる家は、亡くなる直前に被相続人が住んでいたことが最も重要な要件ですが、ご質問のように、亡くなる直前に老人ホーム等に入居していても一定の要件を満たせば適用可能です。

 要件とは、介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホームなどの施設に入所をしていたことや、入所から亡くなる直前まで被相続人が「一定の使用」をしていることが条件となります。

 

空き家特例の要件

空き家特例を使って、節税するための要件にはどのようなものがあるのでしょうか。次に制度を利用できる要件について解説します。

 

①貸付や事業用として利用していない
当記事のケースのように要介護の認定を受けて、介護などが理由で老人ホームなどに入居すること自体は問題ありませんが、入居した後に、家屋やその敷地を他人に貸し付けて、賃料を得ているなど事業に使っている事例は、特例の対象外となります。あくまで、相続が発生した時に被相続人の自宅に供していた物件のみが対象となります。

 

②昭和56年5月31日以前に建築されたものに限られる

特例を利用するために建築された時期にも条件があります。建物が建てられた時期が分からない場合は、建物の登記を確認しましょう。

 

③金額が1億円以下

売買代金が1億円を超える場合は、この特例の対象外となります。他の条件を満たし、1億円を少し超える金額の場合は、あえて価格を下げて条件を満たす状態にした方が手取り金額が増える可能性があります。不動産会社とも相談し、対応するようにしましょう。

 

④マンションは利用できない

この特例は居住用として利用していた土地・建物を売却した際に利用できる特例です。区分所有マンションの所有権はこの特例を利用することができません。

 

⑤確定申告が必要

上記の条件を満たし、特例を利用するためには、書類を提出し、確定申告を行う必要があります。特例の申請を行うための添付書類には、不動産を売ったときの譲渡所得の内訳書や住宅性能評価書の写し等が必要となります。

 

不安がある場合は税理士に相談を

 空き家特例の要件は複雑で、利用できるかどうか、国税庁のホームページを見ても税金の知識がない配偶者や子供などの親族では判断がつかないケースも多いでしょう。また、相続財産を受ける者は相続税の申告も必要です。相続税の申告は財産を一覧にし、不動産以外にも全ての財産の評価をしたうえで計算を行う必要があり、手間がかかる作業です。また、誤った方法で申告をすると税務署に税務調査で問題を指摘される可能性があります。

 

 相続税の期限は被相続人の死亡から10ヶ月と短く、生前に対策がされておらず、知識がなく、慣れていない人が手続きをすると、非常に負担が大きいため、税理士に依頼することを検討してみてもよいでしょう。税理士にも専門分野がありますので、相続税の申告と空き家特例の相談をする場合は、特例の利用に関係する相続税・贈与税・所得税関連の実績が豊富で普段から業務として行っている税理士事務所・税理士法人に依頼するようにしましょう。知り合いから特定の税理士を紹介してもらうことが難しい場合は、インターネットで探してみるのも選択肢のひとつです。

税理士に依頼することで、資料の作成や金融機関の名義変更の手続や各種特例の活用もサポートしてくれるため安心です。実際に依頼する際は電話などで確認し、料金がどれくらいかかるかシミュレーションをしてから依頼することができます。初回の相談は、サービスで無料で応じてくれる場合が多いので、気軽に相談してみるとよいでしょう。税理士に支払う費用は不動産の数や財産の総額によって異なりますので、相続人や資産の内容が分かる資料を準備しておくとスムーズに相談することができます。

 

 空き家特例は相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが要件となっています。相続後、売却を検討している場合には、売却の時期に注意しましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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