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【孫が受取人の生命保険 相続税対策になる?】納税通信3716号 vol.2

April 08, 2022

相続税

Q2 孫が受取人の生命保険 相続税対策になる?

 

 大学生になる孫を受取人とする死亡保険金に加入しようと思います。孫の将来に少しでも役立てばという気持ちで考えたことですが、相続税対策にもなればいいとも思います。受取人が相続人ではない孫でも大丈夫ですか?

 

A2 生命保険における相続税の非課税枠は法定相続人のみ適用されるため、孫が受取人では適用されません。

 

 生命保険は受け取る者の固有の財産として遺産分割協議の対象外となります。また、受け取った死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」の金額まで、相続税の非課税枠があり、財産から控除することができるため、非課税枠に相当する部分は相続税の課税対象にはなりません。財産の合計が生命保険の非課税枠と基礎控除を合わせた金額以下であれば、税額は0円となり、相続税の申告も必要ありません。ただし、この非課税枠が使えるのは、契約者と被保険者が同一で、受取人が法定相続人の場合に限ります。

 

 そのため、原則として孫は法定相続人にならないため、相続税の非課税枠は利用できません。万が一節税目的で加入した保険が孫が死亡保険金を受ける契約になっている場合、受取人の変更を検討しましょう。

 

 さらに、注意点としては法定相続人以外の人が取得した遺産には相続税が2割加算される制度になっています。死亡保険は相続財産ではありませんが、みなし相続(遺贈)財産となるため、法定相続人ではない孫が受け取った死亡保険金は通常2割加算となります。なお、被相続人と養子縁組をして法律上の子供となっていた場合も2割加算の対象になりますが、子どもが亡くなっており代襲相続している場合は2割加算の対象とはなりません。

 

孫に生命保険で財産を遺すメリット

 当記事で解説したケースのように実際に孫を生命保険の受取人にしていたとしても、非課税枠の計算の人数に含めることはできませんので、非課税枠を活用した税金対策にはなりませんが、全くメリットがないわけではありません。

 

 メリットの一つ目としては、評価の高い土地・建物などの不動産や代々続いている事業用資産を承継する際に、保険料を支払って、終身保険を契約しておくことで、納税資金として渡すことができるという点です。孫などに不動産など現物資産を遺したい場合、相続発生時にまだ若く経済力がない孫にとって納税資金が大きな負担となります。生前贈与をするという方法もありますが、贈与だけでは納税資金を確保できそうにない場合は、生命保険も併せて活用することで納税資金を確保することができます。また、生命保険は受取人が指定されているため、直接保険会社に電話をすれば簡単に受け取ることができるので手続きも簡単で、相続放棄をしていたとしても生命保険は受け取ることができます。

 

 二つ目は代飛ばしで相続ができるという点です。相続税は夫や妻に遺すことで、配偶者控除が使えますし、子どもに遺す場合2割加算の対象にはなりません。しかし、年齢の近い配偶者の遺した場合、次の相続の時に相続税がかかりますし、子に財産を遺した場合も子が亡くなって孫に相続する際に再度相続税がかかります。孫が直接受け取ることで、2割加算になるという点は注意が必要ですが、代飛ばしにすることで何度も相続税がかかることを避けることができますので、先のことを考えると節税になる例もあります。このような二次相続に対応した相続税のシミュレーションや節税効果を算出することは非常に複雑な計算が必要となります。

 

 制度を知らなかったとしても、ルールのとおりに申告できておらず税務調査で指摘されると加算税を請求される可能性もありますので家族の中に、相続税や贈与税の知識がなく、仕組みや特例の内容に詳しい人がいない場合は税務の専門家である税理士に相談した方がよいでしょう。初回の相談はサービスで無料で応じてくれることが多いので、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。相談に行く際は財産の一覧を作成し、自分の考えをまとめておくとよいでしょう。

 

孫に財産を遺す際は配分に注意

 孫に財産を遺す際は税金だけでなく、配分についても注意する必要があります。税金の支払い額を軽減するために、孫への贈与や遺贈を行う場合、孫の有無や人数などによって子ども同士で不公平が生じるケースがあります。例えば、長男側の孫が3人で、次男側の孫が1人で、孫1人につき500万円ずつの生命保険に加入した場合、孫1人ずつを見れば公平になりますが、子ども2人にとっては不公平となります。

 相続発生後は10ヶ月以内という短い期間で配分について検討する必要があります。それぞれの考え方の違いで遺産分割の際にトラブルになり親族間の関係が悪化する可能性もありますので、可能であれば生前に遺言書を作成するなど対応を検討しておくと良いでしょう。一般的に亡くなる前に対策を検討しておくことで、しっかりと対策ができるので、同じ財産でも節税や配分に対する対策をすることも可能となります。

 

 

 

 死亡保険金は、受取人によっては思わぬ相続税が課税されてしまうというケースもありますが、受取人固有の財産となる、つまり名指しで財産を相続させることができるというメリットもあります。メリット、デメリットを把握したうえで、上手に活用するようにしましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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