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【遺言での受遺者が財産放棄 他の相続人に贈与税?】納税通信3710号 vol.3

February 18, 2022

相続税

Q3 遺言での受遺者が財産放棄 他の相続人に贈与税?

 

 先日亡くなった父の遺言書は、兄に全ての財産を相続させるという内容でした。しかし兄は3年前から海外に居住しており、父の財産はいらないから母と妹の私で分けてほしいと話しており、私と母も兄の提案に賛成しています。この場合、兄から贈与があったとして贈与税が課税されるのでしょうか?

 

A3 相続人全員で分割協議を行えば、その結果が遺言に優先するため、贈与税が課されることにはなりません。

 

 相続開始前に作成された遺言書があり、公正証書で作成されている事例や、自筆の遺言で家庭裁判所で検認を受けて、民法上有効な遺言であると確定している場合でも、基本的に相続人全員の同意が得られる状況であれば、遺言書や法定相続分と異なる方法で遺産分割をすることも可能です。ただし、遺言執行者がいる場合に遺言と異なる配分で相続財産を分ける場合には、遺言執行者の同意も必要となります。

 例えば、特定の相続人に包括遺贈により全部の遺産を与える遺言書があるものの、相続人全員で遺言書の内容と異なった遺産分割をしたときには、受遺者である相続人が遺贈を事実上相続放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみるのが相当です。したがって、各人の相続税の課税価格は、相続人全員で行う分割協議の内容によることとなります。この場合、受遺者である相続人から他の相続人が取得した分に対して贈与があったものとして贈与税が課されることにはなりません。

 

 上記のように遺言書と異なる配分とする例にも様々な理由がありますが、遺留分を侵害しているケースがあげられます。子どもが複数いる場合で、アクセスが良く価値の高い不動産を一人に相続させるとそれだけで遺留分を侵害してしまうケースもあります。遺留分を侵害する場合、遺言書があったとしても、遺留分侵害額請求をすることで、遺留分相当額の財産を受け取ることができます。遺留分がある相続人の範囲は配偶者、子ども、親等が対象となります。遺留分を侵害する遺言はトラブルとなり、親族間の関係悪化につながるケースが多いので注意しましょう。

 

 他のケースではマイナスの財産がプラスの財産を上回る時に放棄をする可能性があげられます。不動産などに紐づくローンなどの借金があり負担が大きいと受遺者が判断して放棄した場合、誰かが銀行から借りているローンを引き継ぐ必要があります。節税対策でローンを借りて建物を建てたものの、不動産の評価が下がってしまい売却してもローンを返せない場合、負の財産となるケースもあり、相続して処分するか、放棄するか慎重な判断が必要となります。

 

 遺言書を作成する際は自分の判断だけでなく、弁護士や司法書士などが所属する法律事務所にも事情を説明し、効力だけでなく後々問題となる遺言となっていないか、アドバイスを受けて事前に確認しておくと安心です。

 

遺言書とは異なる配分とする際の注意点

 当記事で解説したように遺言書で希望する配分とは異なる配分とする際には、さまざまな点に注意をする必要があります。まず、気を付けたいことは、遺言者がどのような意思で財産の割合を決めたかよく考える必要があるでしょう。配分を決める理由は感情面であったり、税金面での負担を軽減するためであったり、代々引き継いできた不動産を承継するためであったり、さまざまな理由があります。遺言書は被相続人が生前に行った意思表示ですので、理由を知っている場合も知らなかった場合でも、なるべく尊重する必要があるでしょう。

 

 次に注意したいのは相続税の申告期限です。相続税の申告期限は被相続人が死亡した翌日から原則10ヶ月以内に申告と納付を完了させる必要があります。そのため、遺言書で指定された内容とは異なる配分とする場合、話し合いでなかなか解決できず時間が足りなくなるケースが多くあります。相続人同士が遠方に住んでいる場合は電話などでしか連絡をとることができません。いつ、遺産相続について話し合いができるか事前に決めておくようにしましょう。

 

 相続発生後は不動産の登記や名義変更など受ける財産によって、定められている多くの対応を同時進行で進める必要があります。相続税の制度や計算は複雑です。家族の中に知識がある人がいない場合は、流れが分からないという場合も多いでしょう。費用はかかりますが、税理士にサポートを依頼して申告を任せることも検討した方がよいでしょう。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、まずは電話などで気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。

 

 税理士に支払う料金は財産の内容によって決まることが多いので、土地や建物、貯金や株式、投資信託等の金融資産などの財産をまとめて一覧にし、相談に行くとスムーズに手続きを進めることが可能です。知り合いに紹介してもらうことが難しい場合はホームページなどで相続税の申告実績が豊富な税理士を探すと良いでしょう。税務の中でも相続税や法人税など税金の種類の違いにより経験値に差がある場合もあります。相続を専門的に業務として扱っている税理士に依頼することで、短い期間でも安心して任せることができるでしょう。

 

 遺言書があっても、遺言書の記載どおりに分割をすることが税務上の不都合を生じさせたり、相続人間の争いを生じさせたりするような場合には、相続人全員で遺産分割協議をすることも有効です。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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