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【認知症の父からの贈与 相続のときに問題ある?】納税通信3704号 vol.3

January 04, 2022

相続税

Q3 認知症の父からの贈与 相続のときに問題ある?

 

 相続税対策として、父から毎年100万円前後の贈与を受けていました。最近、父に認知症の症状が出てきているのですが、認知症になっても生前贈与を続けてもよいのでしょうか?

 

A3 認知症発症後の贈与は相続財産に加算されて相続税の対象となります。

 

 贈与は、贈与者が財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方(受贈者)が受諾をすることによって成立します。つまり、贈与契約は双方が「あげるよ」「もらいます」ということを承諾しなければ成立しない契約です。

 贈与契約については民法で定められており口頭でも手続きを進められますので、必ずしも契約書等の書類を作成する必要はありませんが、あくまで意思能力があることが前提となりますので贈与者が認知症だと医師が診断し、診断書も出ているのであれば財産を無償で与える意思表示ができないことになりますから、たとえ財産が名義変更されていたとしても、税務署は贈与が成立していないと判断します。契約書に署名捺印ができたとしても、意思が必要となるのです。そのため相続財産に加えずに相続税を計算していれば修正申告が必要になります。現金で贈与されるケースが多いですが、不動産を贈与することもできます。

 このほかに贈与が成立していないと判断される例としては、祖父が孫のために孫名義の口座を作って預金し、その事実を伝えていないため孫が自由に使うことができないまま相続を迎えたものなどがあります。

 

 認知症を発症した場合は、成年後見制度を利用することで法的な後見人となることができますが、あくまで被後見人の生活を保護するための対応をする役目のため、財産の処分などはできますが、公正証書遺言書の作成や贈与を本人に代わって行うことはできません。また、成年後見制度を利用する場合は家庭裁判所に申請し、後見人が選任される流れとなりますが、必ずしも親族が選ばれるとは限りません。弁護士や司法書士に継続して後見人を依頼する場合は、相当な額が費用としてかかる可能性があります。将来意思能力が低下した時のために後見人となる人をあらかじめ決めておく任意後見という制度もありますので、あわせて検討してもよいでしょう。

 

贈与をする際の注意点

一般的によく行われている1人に年間110万円までの非課税の範囲内での暦年贈与は相続税対策にもなり、税金を減らすという意味では大きなメリットがあります。一方で当記事の事例のような認知症以外にも相続が発生する前に贈与をする際にはさまざまな注意するべき点がありますので、以下に解説していきます。

 

 まず、気を付けておきたいのは贈与によって親から子への贈与の金額が不公平になった場合に、遺産分割協議でのトラブルを避けるための対策です。教育資金贈与や住宅用の土地・建物の購入のためなら一括で贈与税の負担なしで多額の贈与をすることが可能です。非課税枠以上に贈与ができるので、節税対策の方法としては有効ですが、贈与の内容によっては法定相続人同士で不公平が生じ、将来相続が発生した時に弁護士を交えて話し合う必要が生じるなど親族間でトラブルになる可能性があります。一度こじれると解決は難しくなるので、当事者同士の関係が悪化しないように財産配分を明確にしてトラブルを防ぐための適切な対応を行うことが重要です。多額の資金の贈与を行う場合は、遺産分割も見据えて課税対象となる全財産を一覧にして、最終的に誰が何を受けるか確認してから贈与をするようにしましょう。

 

 特例の利用などが理由となり贈与をする際に不公平が生じるケースでは、遺言書を作成するなどの対策もあわせて行っておきましょう。ただし、遺言も認知症になってから作成されたものは原則無効となりますので、本人が作成できる状況のうちに着手するようにしましょう。

 

 次に気を付けておきたいのが上記に記載したような贈与を受けた人が存在を知らない名義預金です。名義預金には祖父母や親から子や孫に贈与をする際に銀行の通帳と印鑑を贈与者が管理して実質的に使えない状態にすることも含まれます。相続発生時に贈与者が管理を行っていると贈与行為はなく、名義借りをしていたものとみなされて、相続税の対象となる可能性がります。家族に贈与をするのであれば、相続が発生するまでの間に贈与を受けた人が使える状態にしておくことが重要です。

 

贈与税の相談は税理士に相談を

2024年に税制改正により、大幅に制度が変更されたので、贈与税も複雑化しています。上手に利用することで有利に節税できるようになりましたが、知識がなく自分で申告や書類の準備を行うことが難しい場合もあるでしょう。

 誤った申告をすると税務調査で指摘される可能性がありますので、費用はかかりますが税理士にサポートを依頼して、間違えなく申告を行うことをおすすめします。相続に関する悩みがあり知人から紹介を受けることが難しい場合はホームページ等で相続手続きに実績がある税理士事務所を検索し、気軽に電話やメールなどで問合せてみると良いでしょう。税理士に依頼することで、自身で進めるよりも安心して手続きを進めることができます。

 

 認知症になってから複雑な法律行為をすることができませんので、相続税対策をすることはほぼできません。特に贈与による施節材対策は時間がかかりますので、相続税対策は早めに、長期的に取り組むようにしましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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