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【賃貸物件の空室 相続時の評価に影響は?】納税通信3699号 vol.1

November 25, 2021

相続税

Q1 賃貸物件の空室 相続時の評価に影響は?

先日亡くなった父から相続したアパートは、10室中2室が空室(2室とも募集中)でした。1室は1年以上空室で、もう1室は父が亡くなる半月ほど前に空室になりました。土地の評価に影響はありますか?



A1 被相続人の死亡日に「一時的な空室」と認められれば計算上、資産評価額を下げることが可能です。



貸家の敷地として利用されている宅地を貸家建付地といい、路線価から借地権割合と借地権割合を乗じた額の評価減ができます。しかし、貸家のうち賃貸されていない部屋には適用できないことになっています。



ただし、賃貸用の物件の賃借人が退去した後、速やかに新たな入居者の募集が行われている状況で、空室の時期が1カ月程度であるなど理由があり、「一時的な空室」にすぎないと認められるものについては、たまたま、相続発生時点で空室であったとしても課税時期においても賃貸されていたものとして評価減できます。したがって、空室となる前後で評価額は変わりません。



家屋も同様に貸付用の建物として評価できる場合は次の算式で評価をします。



固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)



借家権割合は全国一律30%と定められています。このように、継続して賃貸用として他の人に貸していると考慮できる不動産は土地・建物の評価の減額を受けることが可能ですので、マンションやアパート建築は相続税対策の手段の一つと行われることがあります。



上記で解説したように、評価額は下げることができますが、収益用のマンションやアパートを建築することで、相続税の節税効果以上に損失ができる場合もありますので注意が必要です。



もともと保有している土地に建物を建てても、マンション用地としては需要が無く、賃借人が見つからない場合もあります。空室が一時的であれば問題ありませんが、継続的に空室状態が続いてしまった場合、節税効果以上に価値が下がってしまい、損失が出る可能性もありますので、次の世代に負の財産を承継することになるケースもあります。マンションやアパートを建てた場合、常に満室になるわけではなく、空室が問題となる可能性があるという点は理解しておきましょう。

判断に迷う場合は税理士に相談を

相続財産の評価額や相続税の計算方法は国税庁が通達を出しており、ホームページにも記載されています。しかし、当記事のケースのように判断基準があいまいな部分や用途によって計算方法が複雑な部分があり、慣れていない人にとっては簡単ではありません。



相続で財産を受ける者は、さまざまな手続きで忙しい上、相続開始から原則10ヶ月以内と短い期限の間に相続税の申告を完了させることが義務付けられており、時間がありません。相続税は所得税などとは異なり、何度も経験することはありませんので、全く知識がないという方も多いでしょう。



申告を怠った場合や誤った場合は、実際に税務署から税務調査で指摘を受ける事例もあります。税務署から指摘を受けた場合、加算税を請求されることもありますので、各財産の評価や該当する特例を活用して減額の対応ができるか慎重に判断する必要があります。平日は忙しい方などで、期間中に申告をすることが難しい場合は、税金のプロである税理士に依頼する必要があります。



税理士に依頼する場合は初回の相談については無料で応じてくれるケースも多いので、まずは気軽に相談して費用について確認してみるとよいでしょう。申告費用は財産によって決まることが多いので、財産の一覧を持って相談にいくとスムーズです。



税理士に依頼する場合は、実務として相続税や相続税と関係の深い贈与税の申告を普段から行っている税理士に依頼するようにしましょう。知り合いに紹介を受けることが難しい場合はホームページなどで探してみるとよいでしょう。



「一時的な空室」については、事実関係から総合的に判断する必要がありますが、賃借人が1カ月以上いなくても「空室」とされないこともあり、また平成28年の判決では5カ月間の空室状態が「一時的な空室」と判断されています。空室の期間が2~3カ月にわたるときは慎重な判断が必要でしょう。



納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。 発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。



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