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【遺産分割協議のやり直し 相続登記後でも可能?】納税通信3697号 vol.1

November 11, 2021

相続税

Q1 遺産分割協議のやり直し 相続登記後でも可能?

 

 亡くなった父の遺産のうち、父名義で所有していた自宅不動産については母が遺産相続することで合意し、相続登記まで行いました。しかし、同居している妹が、「自分も住んでいる家だから」と、共有にしたいと言われました。私も母も共同で保有することに異論はありませんが、そもそも分割協議のやり直しはできるのでしょうか?

 

A1 相続人全員の合意があれば可能です。ただし、贈与税や所得税が課税されるリスクがあります。

 

 遺産分割協議書とは死亡した被相続人の財産について、法定相続人として財産を相続する権利がある者が誰が何を取得するかを全員で合意が成立したことを具体的に証明するために作成する書類です。遺産分割協議書は全員で署名と実印を押印のうえ印鑑証明書や戸籍などを添付し、承継の内容や方法を記載し、不動産の所有権移転登記の手続の他にも金融機関の名義変更の申請を行う際にも使われています。

 そのため、遺産分割協議は基本的にはやり直すことはできませんが、裁判所による調停や審判による遺産分割でないときは、相続人全員がやり直しに合意することで例外的に認められることになっています。また、遺産分割協議が無効・取消となる原因があるときにもやり直しが可能です。

 ただ、遺産分割協議で遺産が分割された後に遺産分割をやり直して財産を移転すると、費用がかかります。遺産分割協議書自体は司法書士や行政書士など専門家のサポートを依頼せずに自分で作成することで無料で作成可能ですが、各相続人の間で財産の贈与や譲渡があったと捉えられて贈与税や所得税が課税される可能性があります。当記事の例でも単独で相続した不動産の持分を移転するため、遺産相続ではなく、譲渡とみなされる可能性が高いでしょう。親族間で売却することもできますが、時価に近い金額でないと差額を贈与したとみなされる贈与税を請求される可能性があります。

 さらに、今回のように遺産分割をやり直して不動産の所有者を変更すると、必ず不動産の住所地の法務局で不動産登記の名義変更の手続きが必要です。名義の変更登記にかかる登録免許税や不動産取得税が必要となり、自分で計算して期限内に納税する必要が生じます。

 

遺言が作成されているケース

 

 当記事で解説したケースは遺言書がないケースでしたが、事前の対策として遺言書を作成している場合、通常は遺言書通りに配分をすることになります。しかし、遺言書があっても。結果的に全員で合意した上で異なる配分の遺産分割協議書を作成することも可能です。生前に遺言が書かれている場合、遺言書通りに手続きを進める例が多いですが、法定相続分と大きく異なる配分となっている場合や、遺留分を侵害しているケース、一人でも相続放棄をする人がいるなど、記載内容通りに進めると問題が生じる時は、遺言書と異なる配分について話し合ってもよいでしょう。相続人には期限内に納税する義務があり、相続税の期限は10ヶ月と短いため、相続発生後すぐに検討する必要があります。

 

 遺言が用意されいてるケースでも土地や建物など特定の財産の配分を変える事例もあれば、預貯金や有価証券などを含めて誰が何を相続するか全部について、初めから話し合いをするケースがあります。親族間の関係が悪く、話し合いがを行っても解決できない場合は弁護士を交えて話し合って決めるケースもあります。状況によっては裁判となり、実際に相続開始から数年かかるケースもあります。

 遺言が作成されているケースでも遺言とは異なる配分とする場合には所有権の移転登記などが完了する前に話し合いを完了させておく必要があります。遠方に住んでいる場合は、なかなか相続人同士で会うことができず、電話などで話し合っても進まないケースが多いので注意しましょう。

 

 基礎控除以下の場合は相続税の申告はありませんが、被相続人の遺産が基礎控除を超える場合、相続税の申告が必要となります。財産をまとめてみて、相続税の申告が必要となりそうな場合は、先に税理士に申告を依頼してもよいでしょう。初回の面談はサービスで無料で応じてくれるケースも多いので、気軽に相談してもよいでしょう。税理士に依頼する際は業務として普段から相続税や相続税と関連の強い贈与税を行っている税理士に相談することをおすすめします。

 

 

 遺産分割の対応をやり直すと、本来支払わなくてもよい税金を支払わなければならなくなるなどデメリットも大きいです。初めに相続財産をよく調査して一覧を作成し、遺産分割は慎重に行いましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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