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【私だけ遺産を全額放棄 額によっては申告必要?】納税通信3695号 vol.2

October 28, 2021

相続税

Q2 

私だけ遺産を全額放棄 額によっては申告必要?

子どもがいなかった兄の相続で、兄の奥さんともめごとになってしまったため一切の権利を放棄することにしました。1億円前後の遺産があるので相続税の申告は必要になると思いますが、私の申告義務はどうなるのでしょうか?

A2 

相続放棄や財産放棄により遺産を受け取らなかった人は、遺産額の多寡にかかわらず相続税の申告義務はありません。

今回は相続放棄や相続放棄が与える影響について解説していきます。

相続放棄とは

相続税の納税義務者は、「相続または遺贈により財産を取得した者」とされています。そのため、相続放棄や財産放棄により被相続人の遺産を受け取らなかった人は、遺産総額が基礎控除額を上回るため相続税の申告をしなければならないときの法定相続人であっても、相続税の納税義務、申告義務ともにありません。

相続税の申告書は、相続人全員の連名で申告することが一般的であり、申告義務のない法定相続人が、他の相続人と一緒に相続税の申告をしても問題はありません。

なお、財産放棄(遺産放棄)と相続放棄は、似ているようですが、相続人の間で「遺産を相続しない」という意思表示をしているだけの「財産放棄(遺産放棄)」と、家庭裁判所に申述をして認められる「相続放棄」とは、法律上全く異なります。相続放棄をすることで、マイナスの財産も承継する義務がなくなりますが、3ヶ月以内に家庭裁判所に申述するなど手続きを完了させておく必要があります。このような違いを知っているか否かで相続開始後にとる行動が全く違ってきますので、注意が必要です。

相続放棄が多いケースは、事業を一人の相続人が引き継ぐケースや生前に多額の生前贈与を受けていて、相続する時に精算するために放棄をするケースなどがあげられます。生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産ですので、放棄をしても受け取ることができます。

税金への影響

相続税の計算を行う場合には、民法上の「相続放棄」があっても相続税法上は「放棄はなかった」ものとして、放棄した人も基礎控除に含めます。相続人全員分の相続税の税額を計算し、実際に取得する金額に応じて、按分計算することになります。基礎控除(3000万円+法定相続人×600万円)の計算の人数にも相続放棄をした人も含める制度となっていますし、生命保険や退職金の非課税枠(法定相続人×500万円)も相続放棄がなかったものとみなして計算を行います。そのため、放棄をしたからといって、負担が増えることはなく、税への影響は少ないといえるでしょう。

相続対策には様々な方法がありますので、自分に合った方法を選択することが重要です。費用は掛かりますが、事前にシミュレーションを行って税理士などの専門家に相続税の制度や配偶者控除や自宅不動産を承継する場合に利用できる小規模宅地の特例など各種控除の要件について解説してもらいましょう。

税理士に依頼することで適用できる特例や贈与を活用することで、課税される金額を減らし、節税することができるなど、メリットも大きいです。財産の金額や内容によっては、軽減できる金額の方が費用の合計を上回る場合もあります。

また、相続人のうち誰かが代表となって次の世代に承継する手続きを行う必要がありますので、財産の一覧を作成しておくなど、できるだけ対応がしやすい状況を作っておき、財産を受け取る負担を減らすことも重要です。

課税対象の資産が基礎控除(3000万円+法定相続人×600万円)を超える方が亡くなった場合、相続税の申告が必要です。相続税の申告は相続発生から10ヶ月と短い期限内に完了させる必要があります。国税庁のホームページなどを確認して自分で申告することもできますが、誤った申告をすると税務署による税務調査で指摘される可能性もありますので、自分で行うことに不安がある場合は、普段から業務として相続税や贈与税の申告を行っており、実績のある税理士のサポートを受けることをおすすめします。初回の相談は無料で応じているケースも多いので、まずは知り合いなどに紹介してもらい、最終的に申告を任せた場合どれくらい費用がかかるか見積もりを確認してから依頼してもよいでしょう。

相続放棄の注意点

当記事のケースのように子供がおらず、妻と親や兄弟姉妹が相続人となる例では、配偶者と子や代襲相続した孫が相続人になる場合とは違い、遺産分割でトラブルになるケースが多いため、家族間でもめ事にならないように事前に遺言を作成するなど対策を打っておく方がよいでしょう。遺言書の書き方が分からない場合は、弁護士や司法書士、税理士などに相談しましょう。

また、相続放棄をする際は他の相続人に伝えることも重要です。相続放棄をすることで、相続人の数が減ることとなります。特に債務がある場合は、負担する割合が増えてしまい、他の相続人に請求される金額が増えることになります。相続放棄の手続きには時間がかかる場合があります。放棄を検討している場合は、3カ月の期限内に放棄の手続きを済ませる必要がありますので、先に後順位の相続人など関係する親族には必ず伝えるようにしましょう。

生命保険金や死亡退職金は「みなし相続財産」となります。遺産を相続していなくても、死亡保険金等を受け取っていれば相続税の申告義務がありますので注意が必要です。

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。

発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。 相続税のご相談は増田浩美税理士事務所 までクローバー

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