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【夫の血族との関係を終了 死後離婚で相続に影響は?】納税通信3683号 vol.2

July 31, 2021

相続税

Q2 夫の血族との関係を終了 死後離婚で相続に影響は?

 

 亡くなった夫とは長いこと不仲でした。先日知人から「死後離婚」という制度があると聞きました。もしも死後離婚をすると、夫の遺産は相続できなくなってしまうのでしょうか。

 

A2 「死後離婚」の正式名称は「姻族関係終了届」といい、配偶者の親族との関係を終了させるための手続きです。実際には、配偶者との離婚をする手続きではありませんので、遺産を相続することはできます。

 

 死後離婚の正式名称は「姻族関係終了届」といい、配偶者の死後に配偶者の家族との姻族関係を終わらせるための手続です。ただし、実際には離婚届を提出するわけではありませんので配偶者との「離婚」ではなく、死亡した配偶者との婚姻関係には影響はしません。なぜなら、民法の規定上、夫婦としての婚姻関係は亡くなった時点ですでに終了しているからです。

 そのため、姻族関係終了届を提出しても、相続放棄を選ぶわけではありませんので、法律上の相続権に影響はなく、配偶者が残した財産を遺産分割で相続することはできますし、遺族年金の受給資格にも影響はありませんので、姻族関係を終了させても配偶者の遺族年金は受け取ることができます。そのため、本人に経済的な不利益は少ないというケースが多いでしょう。

また、子どもの血縁関係にも影響ありません。あくまで、配偶者の親族の人たちとの関係を終了させるために効果的な手続きと考えてください。

 なお、姻族関係終了届は取り消すことができません。提出する前に、その後の影響等を考慮して検討しましょう。

 

姻族関係終了届の流れ

姻族関係終了届を提出するにはどのような流れで行うか解説します。

姻族関係終了届は本籍地か居住している地区の市区町村役場に提出します。必要な書類は以下の通りです。

 

・姻族関係終了届

・戸籍謄本

・身分証明書

・印鑑(認印で可)

 

所定の内容を記載して郵送で送付することもできますので、自分で本籍または住所地の市区町村役場に行くことが難しい場合は、郵送で手続きをしましょう。なお、姻族関係を終了させても苗字が変わるわけではありません。苗字を変える場合は別の手続きが必要となります。

 

姻族関係終了届を提出するメリット

姻族関係終了届を提出するとどのようなメリットがあるのかポイントを説明していきます。

 

①配偶者の親族との関係を断ち切ることができる

相続発生後に姻族関係終了届を提出する人のほとんどが当記事のケースのように配偶者の親族と何らかの問題を抱えているケースが多いです。配偶者の遺産分割協議で折り合いがつかずトラブルになったり、妻として嫁いだら、配偶者の母にいじめられたというケースもあるでしょう。遺産相続の配分で揉めるケースでは、当事者同士では解決できず、弁護士を交えての話し合いや家庭裁判所での調停となるケースも多くあります。

 

理由はさまざまですが、ほとんどの事例で配偶者の親族と仲が悪く、問題や悩みを抱えている事例が多いです。書類を提出することで法律上の姻族関係を断ち切ることが可能ですので、受けていたストレスから開放されるのであれば、面倒な姻族関係を終了させることを選択するのもよいでしょう。

 

②配偶者の親族の扶養を命じられることがなくなる

配偶者の親族の中に、多額の借金がある方や介護などの生活のサポートが必要な人がいる場合、姻族として関係ある者として扶養義務が生じるケースがあります。姻族関係を終了しておけば、扶養を命じられたり、生活を補助するための資金を請求されることはありません。

 

姻族関係終了届提出時のデメリット

姻族関係終了届を提出する時はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。デメリットや注意点を具体的に確認しておきましょう。

 

①夫の親族を頼ることはできない

姻族関係終了届を提出すると、夫の親族との関係は解消されます。夫の相続財産の相続放棄をするわけではありませんので問題なく承継できますが、今後夫の親族を頼ることはむずかしいでしょう。

そのため、今後夫の親族に協力してもらえないと、自身では対応できないことがある場合は、先に済ませておく必要があります。例えば、配偶者から相続した不動産が配偶者の親族と共同で登記されている場合や共同で事業を行っている場合、子どもに生前贈与を受けている場合は姻族関係を終了することで、対象の不動産の管理や事業の運営にも支障をきたす可能性があります。

 

②戸籍を確認するとわかってしまう

姻族関係終了届を提出すると相手方に書類などが送付されるわけではありません。しかし、戸籍を確認すると届出をしたことがわかってしまいますので、夫の兄弟姉妹などと会う可能性がある場合はきまずい思いをするかもしれません。

 

③元に戻すことはできない

一度、手続きの申請が行われ、姻族関係を終了すると、期限などはありませんので、一生元に戻ることはできません。相手にわかるケースもありますので、気軽に連絡をとることは難しくなるでしょう。

関係を継続せず、両者の間は赤の他人になるということですので、気軽にできる手続きではなく、よく検討して慎重に判断する必要があるでしょう。

 

配偶者の姻族と関係が悪いケースの対策

配偶者の姻族と関係が悪いケースではどのような対策を行えばよいのでしょうか。具体的に確認します。

 

①子がいない場合は遺言の作成を検討しておく

子がいない場合、配偶者と被相続人の親または兄弟姉妹、兄弟姉妹が亡くなっていれば代襲相続により、甥・姪が相続人となります。配偶者と両親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、配偶者が全額相続する内容となっていても、遺留分侵害とはなりません。

各財産の評価額をまとめて一覧にし、何を誰に相続させるか検討して遺言を書いておくとよいでしょう。

遺言書は事前に執行者を指定しておくことで、相続発生後の対処も依頼することができます。

事前にシミュレーションをお行い、対策を考えることで配偶者の姻族と不要なトラブルを避けることができます。遺言の書き方が分からない場合は税理士や司法書士など専門の人を紹介してもらうようにしましょう。

 

また、遺言書は内容を何度でも新たな内容に変更することができますので、現時点のプランを記載しておくとよいでしょう。

 

②墓やお葬式について話し合っておく

配偶者とは元気なうちに墓やお葬式の規模や方法について話し合っておくようにしましょう。配偶者が亡くなるとすぐにお葬式の準備を行います。役所の窓口への書類の提出や何かとやることは多いので、時間がない中で決めていく必要がありますので、折り合いの悪い親族と話をすることは非常に負担となるでしょう。

事前に墓や葬式について決めて置くことで、負担を減らすことができます。

 

③相続税の申告手続きの準備をしておく

相続税の申告手続きが必要な場合、一般的に配偶者が代表者となり、手続きをするケースが多いですが、子供がいない場合は義父や義母、義理の兄弟姉妹などに協力をしてもらわないと進まないケースがあります。

 

また、相続税の計算や申告手続きは非常に複雑で知識のない人にとって簡単なものではありません。費用はかかりますが、特例を活用して節税になるケースもありますので、相続が発生した時に困らないように事前に税理士に依頼しておくことも検討しておきましょう。

 

初回の相談は無料で応じてくれることが多いので、まずは気軽に相談し、見積もりをしてもらうとよいでしょう。

 

 「姻族関係終了届」を提出しただけでは姓は変わりません。結婚前の旧姓に戻したい場合は、市区町村役場に「復氏(ふくうじ)届」を提出します。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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