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【父が遺した土地の評価 借地権と地上権の違い】納税通信3680号 vol.3

July 09, 2021

相続税

Q3 父が遺した土地の評価 借地権と地上権の違い

 

 先日亡くなった父が住んでいたマンションの土地は借地だと聞いていましたが、不動産の謄本を確認すると地上権が設定されていました。借地権と地上権では評価方法が変わるのでしょうか?

 

A3 土地に建物があれば、通常通りの評価で構いません。

 

 一般的な地上権とは異なり、「建物を所有するための地上権」は借地権に含めるため、借地権の評価と同様に評価額を求めます。

 

 地上権とは、他人の土地を使用する権利をいい、賃借権とは異なり登記も必要となりますので、誰が地上権を持っているかは登記を確認すればわかる仕組みになっています。その目的は「工作物または竹木を所有するために限られています。地上権は借地権より強い効力を持つため、財産的価値も借地権より高いと考えられることから、原則として借地権とは異なる方法で評価します。

 

 ただし、地上権が設定されている宅地のうち「工作物または竹木」のなかでも「建物の所有」を目的とする地上権は、相続財産の評価をする際には借地権に含むこととされ、通常の借地権と同様に評価します。

 

 借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地が権利の付着していない自用地(他人の権利の及ばない更地)としての価額に借地権割合を乗じて求めます。この借地権割合は、借地事情が似ている地域ごとに定められており、国税庁のホームページに記載されている路線価図や評価倍率表に表示されています。

 

賃借権との違い

 地上権と賃借権との違いについても解説します。地上権は他人の所有している土地を利用する物件の種類の中の一つであり、人に貸すことや譲渡、抵当権の設定も地主への許可が不要で可能となる強い権利です。一方の賃借権は地上権と同じく人の土地を使う権利ではありますが、権利の種類としては債権であり、所有者の承諾を得なければ第三者に転貸することや売却することは認められていません。どちらも建て替え等の条件は契約次第ではありますが、一般的に地上権の方が借主が主張できることが多いため、借りる者にとって強い権利であるといえるでしょう。

 地上権は家のように建物を建てるだけでなく、太陽光発電などで土地を使うために利用されていることも多いです。

 

複雑な権利関係となっている土地を相続した場合の対処方法

次に借地権など複雑な権利関係がある土地を相続で取得した場合の対処方法や注意点について解説します。

 土地の上に他人の建物が建っており、借地権等がついている土地は買主を見つけることが難しいため、不動産会社に査定をしてもらい、処分しようと思っても周辺エリアの売却価格よりもかなり低い価格でしか売れないことが多いです。土地を購入することで、地代をもらうことができますが、地代は安いことも多く、土地を長期間、自由に利用できないことは大きなデメリットと言えるでしょう。

 

 定期借地権のように一部、一定期間を満了すれば、土地を返還してもらえる借地権もありますが、それでも建物を建てるために賃料を支払い土地を借りる契約となるため30年、50年といった長期間での契約となっており、建物が残っていれば契約を存続させることがほとんどです。事業用定期借地権などで会社に貸している場合なども、期間が満了すれば、更新せずに土地を返還してもらえる契約もありますが、契約期間は10年以上50年未満と長期間に渡ります。そのため、売却を検討してもすぐに契約を解除して相場並みの価格で売却できないことが多いので注意が必要です。

 

 権利関係を解消したい場合は建物の所有者と売買の契約をすることで、底地の買取を行い、貸借を終了し、完全な所有権とするという方法があります。完全な所有権とすることで、買い取りにかかった費用以上に評価額が値上がりするケースが多いので、地主にとってメリットが大きい方法です。

 しかし、地代や更新料を請求しても支払いに応じないなどの事情が無ければ土地を借りている者が応じる義務はありません。土地を借りていて、借地借家法で強い立場として保護されている中で応じてくれる可能性低く、借主が有利で地主にとって不利な交渉となることが多いです。また、権利関係の解消にあたって、最初にしっかりとした賃貸借契約で契約期間などが決められていなければ、土地を借りて居住している人が支払う地代や返還の理由などが問題となるケースも多いです。それぞれの立場が違うため、借主と直接交渉するとトラブルになり、合意できずに関係が悪化しそうな場合は、当事者同士で話し合わずに双方がたてた弁護士など法律の専門家に相談するようにしましょう。

 

借地権付きの土地の評価は税理士に相談を

 借地権にもさまざまな種類があり、一般的な所有権がある土地と比べると評価の方法も複雑です。相続が発生した時など土地の評価を行う必要がある場合は税理士に相談した方がよいでしょう。基礎控除を超える財産を保有する人が亡くなった場合、相続税の申告が必要となりますが、申告手続きは相続発生後10カ月以内に財産をまとめて評価額を記載した一覧を作成し、申告書の提出と納付を完了させる必要があります。

 

 相続税の計算は持っている財産の評価だけでなく、特例の可否や計算方法も複雑です。そのため、知識のない人が当記事の事例のように複雑な権利関係のある財産を保有していると自分で期間内に相続税の申告をすることは非常に難しいでしょう。そのため、税金の専門家である税理士に依頼する方が安心です。税理士を知り合いに紹介してもらうことが難しい場合は、各種サイトで相続税や相続税に関連の深い贈与税に強く実績の豊富な税理士を探すことをおすすめします。実際に申告手続きを依頼する場合は費用が掛かりますが、初回の相談はサービスで無料で応じてくれるケースが多いので気軽に相談してみるとよいでしょう。

 

 

 

 地下にトンネルを所有するなど土地の上下の一定層のみを目的として設定される地上権(区分地上権)も、土地の上下のすべてについて効力が及ぶ地上権とは別のものとして評価します。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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