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【居住地と故郷で告別式 両方の費用を相続財産から控除できるか】納税通信3671号 vol.3

May 17, 2021

相続税

Q3 居住地と故郷で告別式 両方の費用を相続財産から控除できるか

 

 死去した父の告別式を執り行います。コロナ禍なので県をまたいで告別式に参列してもらうわけにはいかないということで、最期に住んでいた土地と、遠方にある故郷の双方でひらくこととしました。両方の葬式の費用を相続財産の額から控除することはできますか。

 

A3 一般的な葬式の様式が整った告別式であれば、複数回執り行っても、その費用の全てを相続財産の額から控除することができます。

 

 僧侶の読経や参列者の焼香などの様式を整えた告別式の費用は、何度行っても相続税法上の葬式費用にできます。そのため家族が支払ったお金は債務控除の対象となりますので、取得する相続財産の額から差し引くことが可能です。そのため、自分が喪主となり、さまざまな費用を支払った時は領収書などかかった費用がわかるものをしっかりと保管しておく必要があります。お布施や戒名料など領収書がでないものも、債務控除に含まれる場合がありますので、関連するものはしっかりとメモしておく必要があります。

 葬式は宗教や地域的慣習などに応じて様式が異なるので、どの費用が葬式費用の範囲に当たるかという判定は難しいのが実情です。税務署の判断基準を示した相続税基本通達では、葬儀費用として控除する金額について、①葬式や葬送の際に必要な埋葬、火葬、納骨、遺体・遺骨の回送などの費用、②葬式の際に配った金品で、被相続人の職業や財産などの事情に照らして相当程度と認められる費用、③葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの、④死体の捜索や死体・遺骨の運搬に必要な費用―とされています。告別式を2度執り行った場合でも、①~④に該当するなら、両方の費用を葬式費用として相続財産の額から控除できます。一方で香典を頂いた方への御礼として香典返しや仏壇を購入するための費用や墓地・墓石のローンの残債は債務控除の対象となりません。交通費は葬儀のための必要な交通費は債務控除の対象となりますが法要のための交通費として支払った支出は対象とはなりません。上記に説明したとおり、葬儀場で支払う費用だけでなくさまざまな費用が債務控除の対象となります。法律上、一定の金額を債務控除にできるというような明確にルールがあるわけではありませんので、社会通念上常識的な範囲かなども重要となります。そのため、葬儀費用に関係する債務控除は非常に複雑ですが、事例によっては正しく債務控除を計算に入れることで高額の費用を債務控除の対象とすることができるので税金を安くすることが可能です。

 

 プラスの資産から住宅ローンや事業に関するローンや借金などマイナスの財産を差し引いた正味の財産の総額が相続税の基礎控除(式:3,000万円+法定相続人の数×600万円)以下であれば申告は必要ありません。しかし、注意点としては、基礎控除を超える財産を保有している人が亡くなった場合、使える特例を適用することで相続税の納付額が0になる場合でも相続税の申告が必要となります。例えば、夫婦間で相続し財産を受け取る際に配偶者控除を利用して相続税が0になる場合や小規模宅地の特例によって特定の不動産の評価を引き下げたことが理由となり、基礎控除以下になる場合はもあります。これらの特例は効果も大きいので、相続税が0円になれば税金を納める必要はありませんが、財産を承継する際に申告が必要となりますので注意が必要です。

 

 国税庁のサイトに相続税の制度について記載されていますが、当記事で解説したケースのように、相続税の制度や計算方法、特例や税額控除の活用や各種控除対象は非常に複雑で、自身では要件を満たすか判断できないケースも多いでしょう。相続人の中に相続税の知識がある人がいない場合は、申告の手順が分からない場合も多いので、税金の申告手続きや特例の申請を行う際に税金の専門家である税理士に依頼することを検討してみてもよいでしょう。税理士に依頼することで、生前に節税の対策で行った生前贈与分の計算や遺産の評価、相続発生後に必要となる準確定申告についても対応してもらうことが可能です。

 一般的に税理士の報酬は財産の金額がそれぞれの財産の評価の複雑さによってきまります。そのため、税理士に相談する際は、先に亡くなった時点の銀行の預貯金、株式などの金融資産や不動産、生命保険など課税対象となる財産の一覧の表など内容がわかるものを書きだしておき、資料として準備し持っていくとスムーズに相談することができます。また、誰が何をどのような割合で相続するかによって相続税も変わってきますので、遺言書がない場合も遺産分割の方針を具体的に説明できるようにしておきましょう。

かかる費用や税額がいくらくらいになりそうか、おおよその金額についても契約する前にシミュレーションを行い確認することができます。また、財産が複雑な場合は追加で料金を支払う必要が生じる可能性もあります。

 

 相続開始後に相続財産を受け取った者は納税の義務がありますが所得税などと違い納税義務が定期的に発生するものではないため、自分で申告することは簡単ではありません。税の申告は原則、被相続人の死亡後10ヶ月以内と支払い期限まで短いです。家族が亡くなってからは、預金を預けている金融機関の名義変更などで遺族は何かと忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。税理士のサポートを受けることで、添付する書類の作成など親族の代わりにやってもらえるので負担を大きく減らすことができるというメリットがあります。また、税務調査を受けると税務署から徹底的に調べられ、誤った申告をしていた場合、加算税を請求されます。しかし、税理士に申告を依頼しておけば調査に入られても安心です。

 税理士資格を持つ人でも、相続税には詳しくないという人もいますので、税理士に依頼する際は相続税や贈与税に強く普段から実際に業務として行っている税理士事務所・税理士法人に相談するようにしましょう。知り合いに紹介してもらうことが難しい場合はホームページで住所や業務内容を確認し、面談の約束をしてみてもよいでしょう。

初回の相談は無料で応じてくれるケースも多いの悩みや不明点がある時は気軽に電話などで相談してみることをおすすめします。

 

 

 初七日や四十九日、一周忌などの法会(法事)は、葬式とは異なる意味合いを持つ儀式であることから、相続税法上の葬式費用には該当しません。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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