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【兄が相続放棄 税額に影響する?】納税通信3784号 vol.2

August 06, 2023

相続税

Q2 兄が相続放棄 税額に影響する?

先日亡くなった父の遺産分割の話し合いで、兄は住宅購入時など生前に多額の贈与を受けていることから放棄してもよいと言っています。しかし放棄してしまうと相続人の人数が減って、相続税に影響があるのではないかと考えますがいかかでしょうか?

A2 税金の計算上は、相続放棄はなかったものとして計算されるため、相続税の総額は同額です。

民法に定める手続きに従って相続を放棄した人は、相続税法上も相続人とならなかったものとみなされます。ただし相続税の総額は、相続を放棄したとしても、その放棄はなかったものとして法定相続人の数や相続分が計算されるため、今回の事例では相続放棄を行ったとしても相続税の総額は同額となります。

ただし、相続放棄をしても生命保険や退職手当金は受取人固有の資産として、それぞれが受け取ることができます。

相続を放棄した人が受け取る生命保険金や退職金等には非課税枠の規定(法定相続人×500万円)が適用されません。また相続放棄した人が債務を負担すると債務控除できないことで相続税額は増えることがあります。

また、節税対策で暦年贈与の制度を使い110万円以内の金額で生前贈与を行う場合、注意が必要です。2024年から課税制度が変わり、相続発生前7年以内に受け取った贈与は贈与税の対象ではなく、相続税の対象となります。

相続税の計算は複雑で、10ヶ月と短い期限内に税務署に申告書を提出する必要があります。課税価格などを誤って申告をした場合、税務調査で指摘される可能性もあります。

国税庁のホームページで基本的な制度を確認することはできますが、課税対象財産の課税価格の評価や税率の計算は非常に複雑で、知識と経験が必要となります。税制改正も頻繁にありますので、相続税申告の対象となる場合は、申告実績が豊富な税理士のサポートを受けて進めることをおすすめします。

相続放棄をする際の注意点

相続放棄をする際は、他にどのような点に注意をすればよいのでしょうか。次に注意点と解決するための方法についてポイントを解説します。

①子どもが放棄をする場合は二次相続に注意

父親が死亡し、被相続人となり母親が存命の場合、配偶者控除を利用すれば1億6千万円以内または法定相続割合の範囲であれば、非課税で相続することができるため子供は全員放棄をするというケースが多くあります。

このケースでは確かに、父親が亡くなる一次相続では非課税で相続することができるというメリットはありますが、母親が亡くなるタイミングの二次相続では、相続人が1人減っていることで基礎控除の金額が600万円分減っていることや、父親と母親の相続財産が合計され、遺産の額が増えており、相続税が高くなるケースがあります。

相続税の対策は一次相続と二次相続をふまえてシミュレーションを行った上で配分方法を検討する必要があります。まずは土地・建物、金融資産などの財産を一覧の表にし、相続があった場合どれくらいの相続税がかかるか把握しておきましょう。

インターネットなどで、検索し、計算すれば無料で行うことも可能です。不動産の評価などが不安な場合は費用はかかりますが、税理士事務所や税理士法人の紹介をしてもらい正確に把握するようにしましょう。紹介を受けることが難しい場合は税理士のサイトなどで検索し、気軽に電話などで問合せをしてみるとよいでしょう。

②債務がある場合は要注意

被相続に債務などマイナスの財産がある際は放棄をする際に注意が必要です。債務などマイナスの財産は相続が発生した後、法定相続人が精算する必要があります。家庭裁判所で相続放棄の手続きをした場合、債務を承継する義務もなくなりますが、他の相続人の債務の負担割合が増えたり、次の順位の相続人に権利がうつったりすることになります。知らずに相続人になった人は意図せず負債を請求されることになりますので、放棄をする場合は、放棄をする前に関係がある兄弟姉妹など相続人全員に放棄する旨を伝えるようにしましょう。

被相続人が事業の代表を務めており、事業の負債があることもあるでしょう。このようなケースでは資産と負債の配分割合について遺言を作成し、配分を指定しておくなど、対策をしておくとよいでしょう。

③代襲相続はしない

子どまである自分が相続放棄をすると自分の子ども(被相続人の孫)が代襲相続すると考える人もいますが、実際は相続放棄をした場合、代襲相続の権利はありません。

あくまで、代襲相続は相続人が亡くなっていた時の対応で次の世代に権利を承継するものですので、相続放棄では代襲相続は発生しません。

 相続の放棄をしても、遺贈によって取得した財産(遺贈によって取得したものとみなされる保険金や退職手当金等を含む)があると、相続税の納税義務者になります。放棄するか否かは、遺贈によって取得する財産の有無も確認してから検討するようにしましょう。

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。 発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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