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【遺言で「全てを妻に」 長男がもらう方法は?】納税通信3780号 vol.1

July 07, 2023

相続税

Q1 遺言で「全てを妻に」 長男がもらう方法は?

 

先日父が亡くなり、遺言書が見つかりました。相続人は私を含めた兄弟3人と母ですが、遺言書には「妻(私の母)に全ての財産を相続させる」とありました。私も長年両親と同居してきて、妻にも父の介護などで苦労をかけてきたので、いくらか相続財産を貰える方法はないのでしょうか。

 

A1 相続人であれば一定の「遺留分」を主張できます。

 

そのようなケースでは、相続人であれば生前に全財産を夫婦間で遺す内容の遺言が作成されていたとしても一定の「遺留分」を主張できる制度となっています。遺留分とは、民法で定められている相続人が最低限の相続できる財産です。遺留分が保証されている相続人は、配偶者、子供、父母などの親だけであり、法定相続人の第3順位である兄弟は遺留分を保証されていません。

 

遺留分という権利を使って取り戻せる遺産の割合は、本来の法定相続分の2分の1です。そのため、少なくとも法定相続分の半分は法的に財産を受けることが認められています。ただし、両親の場合は相続時に被相続人に子がいない場合にのみ遺留分権利者となり、法定相続人に配偶者がいない場合、3分の1となります。

 

 遺言を作成することで、相続人同士で協議をする負担を減らすことができます。しかし、生前に遺言を作成していても、遺留分を侵害するような内容になっていた場合、死後に意向とは沿わない、別の遺産分割の方法にせざるを得ない場合があるため、遺留分も考慮した内容とする必要があります。まずは預貯金や不動産など財産を一覧にして、評価を行い、遺留分侵害となりそうかどうか確認しましょう。

 

 遺言の書き方や手続きの流れが分からず大変な場合は、費用はかかりますが、弁護士や司法書士、税理士などのサポートを受けるとよいでしょう。特に事業に関連する財産がある場合やアクセスの良い好立地な場所にある価値の高い不動産を保有している場合、自宅の家と土地しかないなど財産が不動産のみの場合などは、相続する人を指定することで不公平が生じやすくなります。付言事項に配分を決めた理由や自分の考えを書いておくなど、争いにならないように相続人の心情に寄り添った内容とし、理解を得ることも重要となります。しっかりと遺言を残したい方は自分で作成する自筆証書遺言よりも作成時に効力が認められる公正証書遺言をおすすめします。公正証書で作成することで、遺言書は公証役場で保管されるため、偽造や変造の恐れがないというメリットもあります。

 

 また、相続税対策の一環で多額の生前贈与を行った場合も、特別受益として遺留分侵害となる可能性がありますので、注意が必要です。多く財産を残したいと思い、行った贈与で、亡くなった後に兄弟姉妹間のトラブルになるなど、問題が発生する事例もありますので、気を付けましょう。話し合いで解決することができる場合もありますが、それぞれの想いが通じず、関係が悪化するケースも少なくありません。

 

 侵害された遺留分を確保するためには、遺言書により財産を相続した人に、「遺留分侵害額請求」をする必要があります。この請求権は必ずしも裁判で訴える必要がなく、相手方に対する一方的な意思表示で足ります。

 

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発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

 

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