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【不動産と残債を姉が相続 なぜ銀行から母に請求?】納税通信3767号 vol.1

April 09, 2023

相続税

Q1 不動産と残債を姉が相続 なぜ銀行から母に請求?


先日父が亡くなりました。相続人は母と姉と私の3人です。相続財産のうちビルが1棟(時価1億円相当)とその分の金融機関からの借入が6000万円ほどあります。

相続発生前に遺言が作成されていなかったため分割協議の結果、ビルは姉が相続し、銀行からの支払いも姉が行うという約束をして、その他の預貯金等を母と私で相続しました。ところがしばらくして銀行から母のところへ債権回収のため6000万円のうち半分の3000万円の支払い請求がありました。

姉と借金の返済について合意しているにもかかわらず母は自分が債務者として借金の支払いに応じて返済する義務があるのでしょうか。


A1 債務は共同相続人に相続分に応じて自動的に相続されるため、相続分に応じた負担を負います。


住宅ローンは団信があり、死亡とともに借金がなくなりますが、今回のような内容のローンの場合は相続が発生した後に相続人が支払う必要があります。金銭債務などの分けられる債務は、相続の開始と同時に被相続人の法定相続人に法律上は当然に分割され、相続人がそれぞれの相続分に応じて負債を引き継ぐことになっています。つまり、債務は相続開始の時点で共同相続人に相続分に応じて自動的に相続され、遺産分割協議で誰が債務を相続することに決めたとしても、それを債権者に主張することはできません。




一方で、相続放棄をした場合は財産を引き継ぐ権利を失う代わりに、被相続人の借金があっても債務者になることはありません。財産も借金を承継したくない場合の対策としては相続放棄をする方が確実です。しかし、相続放棄をすると一切財産を引き継ぐことができません。そのため、相続放棄をすると自宅など特定の資産も引き継ぐことはできませんので、注意が必要です。相続放棄をする場合は被相続人の死亡から3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行い受付してもらう必要があります。


 当記事の事例では、母は債務者に返済をする必要があります。ただし、遺産分割協議の際に話し合い、債務は誰が引き受けるのかを決めることは意味が無いことではありません。この遺産分割協議の決定は、債権者に対しては主張する権利がありませんが、共同相続人たちの中では有効です。今回のように債権者からの請求が来た場合、まず法定相続分を立て替えておき、その支払った分を遺産分割協議で決定した債務を引き受けた人(姉)に対して請求することになります。姉が預金を遺産として相続しておらず、借入金を支払う能力がなく問題となった場合は弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。初回の相談は無料で応じてくれるケースもありますので、電話やメールなどで気軽に問い合わせみるとよいでしょう。


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