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【相続財産が自宅のみ 兄弟でどう分ける?】納税通信3756号 vol.2

January 19, 2023

相続税

Q2 相続財産が自宅のみ 兄弟でどう分ける?

 

 父は既に他界しており、母も高齢のため、母は遺言を作成していなかったので、母の財産の相続について、長男である私と弟の二入で近々話し合います。対象となる相続財産の大部分は自宅不動産のため、決定相続通りに分けるのは現実的ではないと思いますが、何か良い方法はありませんか?

 

A2 どちらか一方が不動産を相続し、もう一方に一定額を支払う代償分割という方法があります。

 

 相続財産が現金や預金であれば、被相続人が亡くなった時に平等に法定相続分通り分けることは簡単です。しかし、被相続人が保有していた相続財産が土地建物やマンションのような不動産しかない、もしくは残した財産の大部分が住んでいた不動産という場合に、預貯金など不動産以外の財産を相続する分が少なくなってしまうので、法定相続分通りに分けるのは容易なことではありません。法定相続分の割合で共有にするという方法もありますが、後々争いごとの原因になることも多く、あまりお勧めできません。

 このような場合に、相続財産の全部または大部分を特定の相続人が相続する代わりに、その相続人が他の相続人に対して代償金を金銭で支払う「代償分割」という分割方法があります。課税価格の計算は、次の通りとなります。

●代償金の支払人=相続または遺贈により取得した財産の価額-交付した代償財産の価額

●代償金の受取人=相続または遺贈により取得した財産の価額+交付を受けた代償財産の価額

 

代償分割の注意点

代償分割をする際にはどのような点に注意をすればよいのでしょうか。代償分割の注意点について紹介します。

 

正確に価値を把握することが難しい

代償分割をする際は不動産などの価値を把握することが必要です。不動産には様々な評価額があり、相続税評価と売却価格が異なる場合も多いです。そのため、正確に価値を把握することが難しく、遺産の価値について複数の相続人間で同意できず、トラブルになるケースもあります。

 

代償金を支払えないケースもある

当記事の事例で解説したように相続財産のうち、家が大部分を占める場合、親が住んでいた実家の価値が東京などアクセスが良いエリアで値段が高い物件の場合、取得する者が多額の代償金を支払う必要が生じます。そのため、代償金として支払うお金をすぐに用意できないケースもあるでしょう。また、そのまま名義を変更して住むような状況の場合は、売却して換価することもできません。

このような事例では代償分割の制度を有効に活用できないため、誰か一人の相続人が自宅不動産を取得すると、他の親族が相続放棄をせざるを得なくなり、遺留分の問題も生じる可能性があります。法定相続人全員で合意した状態でないと遺産分割もすることができません。

 

納税資金を確保する必要がある

基礎控除を超える財産を所有する人が亡くなり、不動産を相続する場合、相続税がかかりますので、相続税の納税資金も確保する必要があります。非課税枠もありますので、生命保険の保険金を納税資金として充てるのもよいでしょう。税金についてはどれくらいの税金がかかりそうか、税理士に相談し、サポートを受けることをおすすめします。税理士に依頼することで、費用はかかりますが配偶者控除や小規模宅地の特例等、さまざまな種類の特例や控除を活用して効果的な節税対策を検討することも可能です。

 相続税は被相続人の死亡から10ヶ月以内に申告と納付を行う必要があります。他にも不動産の登記や、金融機関の手続きなど様々な手続きを行うため、時間がありません。遺産相続発生後、すぐに準備に取り掛かる必要があります。

 

正式な手続きを行わないと贈与となってしまう可能性がある

代償分割をする場合は生前に公正証書遺言や自筆証書遺言などの遺言書を作成し、記載しておくか、遺産分割協議書に明記しておかないと、相続発生後に贈与したという理由で家族間で贈与して贈与税を請求される場合があります。しっかりと対策をしないと財産を分けることで多額の贈与税がかかる可能性がありますので、正式な手続きを経て代償分割を行うようにしましょう。

 

 遺産分割協議書に「代償分割」として支払う旨を記載しない場合、代償金の支払いが単なる贈与であるとされ、贈与税を課税されることがあります。遺産分割協議書に代償として支払うということを明記しましょう。

 

 

納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。
発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。

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