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【財産を相続しない相続人 手続きを簡単に済ませたい】納税通信3664号 vol.1

March 23, 2021

相続税

Q1 財産を相続しない相続人 手続きを簡単に済ませたい


父の相続財産は父が姉と住んでいた不動産だけです。弟はきょうだい3人で均等に相続することを望んでいますが、そのまま家に住むことを望む姉の希望を尊重して私は相続しない予定です。遺言書はありませんでしたが、遺産分割協議でじっくり話し合って検討したうえで決めるつもりはなく、手続きを簡単に済ませたいと思っています。何か方法はありますか。


A1 「相続分不存在証明書」を利用すれば、「相続放棄」と比べて少ない手間で手続きできます。


配分について話し合う必要がないように、遺言を先に作成してことが理想です。遺言には公証役場で作成する公正証書遺言と自分で作成する自筆証書遺言がありますが、裁判所での検認が不要で、喪失する心配もなく作成時に法的に有効なことが確定する公正証書遺言がおすすめです。


遺言書があれば、遺留分を侵害し、侵害された者から請求されない限り、誰がどのような割合で遺産相続するか確定するため、遺言書のとおりにスムーズに手続きを進めることができるでしょう。特に法定相続割合とは異なる配分としたい場合は、トラブルが発生し、調停などが必要になる例では解決するために時間がかかりますので、遺言書を作成しておく必要性は高いでしょう。


当記事のように遺言がないケースで故人の財産を家族のうち特定の一人に単独で相続させるには、相続人全員で遺産の分割方法を話し合って遺産分割協議書を作成するか、他の相続人が相続放棄をすることが必要です。遺産分割の話し合いには時間がかかることがありますし、また相続放棄は家庭裁判所で被相続人の死亡の翌日から3カ月以内に書類を提出して手続きを行う必要があるため手間がかかります。これに対して、「相続分不存在証明書」という文書を作成して提出すれば、簡単に手続きを終えることが可能です。相続の手続きや年金事務所での年金の支給停止の手続きや電気やガス、水道などの公共料金の引き落とし口座の変更、介護保険、国民健康保険などさまざまな手続きが必要で忙しい中で簡単にできるということは大きなメリットです。


相続分不存在証明書を作成すれば相続放棄と同じような効果が生じます。ただし相続放棄とは違い、相続人としての地位はなくならないので、被相続人に借金があった時に、プラスの財産を引き継ぐ権利だけでなく、借金も引き継ぐ義務が生じます。借金がある可能性がある方が亡くなった人にどのような財産があったか、借金に有無をよく確認してから早いタイミングで手続きを進めるようにしましょう。


借金があるかどうかわからない場合は、大きな借金を引き継ぐことを回避するために限定承認を選択するとよいでしょう。限定承認は被相続人のプラスの財産の範囲で債務を引き継ぐ承継方法です。ただし、限定承認は民法で定められた法定相続人全員で合意して行う必要がありますので、1人でも他の相続人に理解を得られない場合は選択できません。


兄弟姉妹の数が多い場合などは意思統一に時間がかかることがあるため、注意が必要です。限定承認を選択する場合は遺産相続する意思があるかどうか、相続人と早めに電話などで連絡を取って決定するようにしましょう。

相続分不存在証明書の作成方法

当記事で解説した相続分不存在証明書には決まった書式や記載方法はなく、生前に贈与を受けているなど特別受益を受けているため相続分が存在しないことなどを記載することになります。書類には実印と印鑑証明書の添付が必要です。


ただし、相続分不存在証明書を作成してもそれだけで手続きが完了するわけではなく、それ以外にもさまざまな手続きを忙しい中で進める必要があります。銀行や証券会社など金融機関の預貯金や株式などの有価証券の解約、名義変更や住所地の管轄の法務局で不動産の登記を行いますので、戸籍で相続人を証明する必要があります。


市区町村役場で出生から亡くなるまでの戸籍謄本を発行してもらい、相続人を確定する作業や、所得がある場合は準確定申告、相続税を申告するために金融資産や生命保険の保険金、土地・建物、金など各財産をまとめて一覧の表を作成し、評価や相続税の計算と納付を行う必要があります。もし、後で通帳などを発見すると財産額が変わり、計算も始めからやり直して行わないといけなくなりますので、丁寧に財産を把握するために最初に調査を行う必要があります。


一般的に所得がある場合の準確定申告は相続開始から4カ月以内、相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内とそれぞれ期限が定められており、期限内に手続きを済ませる必要があります。対象となる財産の総額が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)以下であれば相続税の申告は必要ありませんが、状況に応じてしっかりと期限を確認することが重要です。


仕事などで忙しくスケジュール的に自分で行うことが難しい場合や手続きの流れがつかめず、次に何をしていいか分からない際は、費用の負担はありますが司法書士や税理士などの専門家に手続きの代行を依頼することをおすすめします。


税理士に依頼することで、条件が複雑で判断が難しい特例や控除なども漏れなく活用することができますので、費用以上に節税につながることもあります。税理士を知り合いに紹介してもらうことが難しい場合はホームページなどで普段から業務として行っており、相続に強い税理士を検索して相談してみるようにしましょう。一般の人は相続税の申告の経験は少なく、制度の理解は難しいと思います。


税金面の悩みがある場合は税務のプロである税理士のサポートやアドバイスを受けることで、配偶者や子供など相続人の負担を大きく軽減し、安心して手続きを進めることができます。正式に契約する前に見積もりをしてもらうとよいでしょう。


相続分不存在証明書を作成しても、その内容や理由が事実に反する時は無効になります。作成しても必ず有効となるわけではありませんので注意しましょう。


納税通信 』 は、オーナー社長向け財務・税務専門新聞です。 発刊から約70年、経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。


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